あの傾いた人たち② お金のない細木数子

あの傾いた人たち②

私は心の中で、ママのことを
「お金のない細木数子」と呼んでいた。
きっかけは六星占術だった。

ある日、ママから大量の本を渡された。

「読んでみ。」

それは勧めるというより、宿題に近かった。
次に会うと聞かれる。

「大殺界の意味わかった?」
「霊合星は見た?」

読まなくても怒られるわけではない。
でも、読んでいて当然という空気があった。
おかげで私は、六星占術にかなり詳しくなった。
興味があったというより、ママの授業を受けていたようなものだった。

ママは店でも女王様だった。
お客さんの方が気を使う。
何か言われても、

「もう、ママだから仕方ないか。」

そんな空気があった。
お客さんの多くは裕福だった。
経営者もいたし、資産家もいた。
それでも店の中では、ママが中心だった。

話し方も独特だった。

「こうした方がいい。」
「それは違う。」
「だから駄目なのよ。」

迷いがない。
そして根底には、
「私の言う事を聞いてりゃ、みんな幸せになる。」
そんな確信があったように思う。

ただ、ひとつだけ例外があった。
本当のお金持ちだ。
いわゆる「超」が付くような人たち。

そういう人の前では、ママの態度が変わった。
あまりにも露骨で、私は笑ってしまうほどだった。
普段は誰に対しても強気なのに、その人たちには違った。

ママの中には、順位表があったのだと思う。
私は長い間、ママはお金が好きな人だと思っていた。でも今は少し違う気もする。

ママが欲しかったのは、お金そのものではなく、お金が与えてくれる立場や影響力だったのかもしれない。
今振り返ると、ママは細木数子が好きだったのではない。

細木数子になりたかったのかもしれない。
だから私は今でも、あの人を思い出すとこう呼んでしまう。

「お金のない細木数子」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

53歳の会社員。
お金、働き方、人生のこと。

答えを探しながら、
凪の森を書いています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次