④生きてよ。

乳がんが見つかった頃、
私は今の夫と付き合い始めてまだ数か月だった。

病気そのものもショックだったけれど、
別のことも考えていた。

もう結婚なんて無理だろう。
そう思った。

まだ付き合い始めたばかりだ。
これから先、もっと健康な人と出会うことだってできる。

わざわざ病気のある私を選ぶ必要なんてない。
そう考えていた。

でも、黙っているわけにはいかなかった。
私は彼に病気のことを話した。

乳がんであること。

手術を受けること。

場合によっては胸を切除すること。

すると彼は言った。

「関係ない。」

そして続けて、

「がんなんて切ってしまえばいい。」

「片方の胸がなくなろうが、何も変わらない。」

あまりにも迷いのない言葉だった。

私は乳がんになったことで、

失うものばかり考えていた。

健康。

仕事。

将来。

結婚。

女性としての自信。

でも彼は違った。

私が大問題だと思っていたことを、

まるで問題ではないかのように言った。

そして、

「生きてよ。」

とつぶやいた。

あの時の私は、その言葉にどれだけ救われただろう。

乳がんになって失ったものもあった。

けれど、

あの日の「生きてよ」という言葉を、
今でも覚えている。

あの日、
私は失うものばかり数えていた。

夫は、
生きていることだけを見ていた。

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この記事を書いた人

53歳の会社員。
お金、働き方、人生のこと。

答えを探しながら、
凪の森を書いています。

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