乳がんが見つかった頃、
私は今の夫と付き合い始めてまだ数か月だった。
病気そのものもショックだったけれど、
別のことも考えていた。
もう結婚なんて無理だろう。
そう思った。
まだ付き合い始めたばかりだ。
これから先、もっと健康な人と出会うことだってできる。
わざわざ病気のある私を選ぶ必要なんてない。
そう考えていた。
でも、黙っているわけにはいかなかった。
私は彼に病気のことを話した。
乳がんであること。
手術を受けること。
場合によっては胸を切除すること。
すると彼は言った。
「関係ない。」
そして続けて、
「がんなんて切ってしまえばいい。」
「片方の胸がなくなろうが、何も変わらない。」
あまりにも迷いのない言葉だった。
私は乳がんになったことで、
失うものばかり考えていた。
健康。
仕事。
将来。
結婚。
女性としての自信。
でも彼は違った。
私が大問題だと思っていたことを、
まるで問題ではないかのように言った。
そして、
「生きてよ。」
とつぶやいた。
あの時の私は、その言葉にどれだけ救われただろう。
乳がんになって失ったものもあった。
けれど、
あの日の「生きてよ」という言葉を、
今でも覚えている。
あの日、
私は失うものばかり数えていた。
夫は、
生きていることだけを見ていた。


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