【第3話】知らなかった家の固定費と、遺族年金の手続き

夫を見送り、葬儀や諸々の片付けが一段落した頃。
私は、それまで触れてこなかった「我が家のお金の全貌」と向き合うことになりました。

生前、私達夫婦はお財布が別々でした。
日用品や雑費は私が担当し、光熱費や固定資産税といった家全体の固定費はすべて夫が支払ってくれていたのです。

そのため、恥ずかしながら当時の私は「この家を維持するのに毎月いくらかかっているのか」を正確に知りませんでした。

目次

届く請求書から始まった「固定費のあぶり出し」

最初に手を取りかけたのは、夫の机の引き出しや通帳、そして郵便受けに届く請求書や通知の数々でした。

電気代、ガス代、水道代、そして一戸建てにかかる「固定資産税」の通知書……。
一つひとつ数字をノートに書き出してみて、拍子抜けすると同時に、胸の奥から静かな安堵感が湧き上がってくるのを覚えています。

お互いに働いていて日中家にいなかったせいか、電気代は思っていた以上に安く抑えられていました。

そして何より大きかったのは、住宅ローンが終わっていたことです。田舎の一戸建てだから土地の評価額や税金もそれなりで、毎年の固定資産税もそれほど大きな負担ではありませんでした。

「あれ……このくらいの支出なら、無理して今の仕事を走り続けなくても、私一人でやっていけるんじゃないかしら?」

未知だった数字が具体的な「これだけでいいんだ」という金額に変わった瞬間、プレッシャーで押し潰されそうだった心に、「仕事を辞めて自分のペースで生きる」という新しい選択肢と希望が灯った瞬間でした。

難解な手続きの波と「驚きの受給額」

固定費の全体像が見えてくると、次に待っていたのは遺族年金などの公的な手続きでした。

まず「ねんきんダイヤル」へ電話し、年金事務所へ行くには事前予約が必須だと知りました。その際に聞き間違えてしまい、役所で「夫の住民票の除票」が必要だと思い込んで問い合わせたところ、「発行までに10日から14日かかる」と言われて「そんなに待つの?仕事を何度も休めないのに…」と焦る場面も。実際は死亡の記載がある戸籍(除籍)があれば大丈夫だと後でわかり、胸を撫でおろしました。

しかし、いざ予約日に年金事務所へ行って提示された受給額を見て、私は言葉を失いました。
そこに書かれていたのは、なんと「年間で6万円弱」という目を疑うような数字だったのです。

驚いて絶句する私に、職員さんはこう告げました。
「旦那様は公務員でいらっしゃったため、共済年金の分はこちらでは分かりかねます」

一瞬落胆したものの、後日共済へ電話をしてみると「必要書類をお送りするので、記入して返送していただければ手続きは完了します」とのこと。

結果的に、何度も仕事を休んであちこちの窓口へ出向く必要はなく、郵送でスムーズに手続きを進めることができたのです。

一つずつクリアすることで見えてきた「これからの暮らし」

知らなかった固定費を洗い出し、複雑に思えた手続きを一つずつ終える。
当時は毎日のように届く書類や慣れないタスクに追われ、頭も心もいっぱいでした。

それでも、分からないことを調べ、未処理のタスクをノートから消していくうちに、少しずつ心に「凪(なぎ)」が戻ってくるのを感じました。

不安の正体は、金額の多寡ではなく「何がどうなっているのか分からない」という状態そのものだったのだと思います。

自分の手で数字をあぶり出し、必要な手続きを完了させたとき、私はようやく「一人の生活の手綱」を自分で握り直すことができました。そして、それまで「耐えるもの」だった仕事や働き方についても、本気で見直し始める準備が整ったのです。

次回のお話

▶︎ 役所の窓口で言葉を失った日。亡くなった夫の「住民税」という現実【第4話】

📖 これまでのお話

▶︎ 『凪の森の小さな暮らし』記事一覧はこちら

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この記事を書いた人

はじめまして、めいです。
50代、単身。夫との死別や仕事の限界をきっかけに「これからの生き方」を見つめ直し、自分らしい身の丈の暮らしを模索中です。

悩んだ末に見つけた制度やおカネのリアル、心穏やかに暮らす工夫を綴っていきます。どうぞよろしくお願いします。

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