③生きてよ

付き合って間もない頃だった。

これからどうなるんだろう。そんなことを考えていた頃、

私は乳がんだと告げられた。

ステージ1だった。頭の中が真っ白になったわけではない。

でも、ひとつだけ思ったことがある。「ああ、結婚はだめだな」

まだ付き合い始めたばかり。これから先のことなんて、何も約束していない。そんな相手に、がんだなんて言えないと思った。

でも、言わないわけにもいかなかった。私は恐る恐る伝えた。

「乳がんだった」

すると彼は、少しも慌てなかった。そして、こう言った。

「胸が片方なくなっても、何も変わらない。」
「医者が勧めるなら取ってしまえばいい。関係ないよ。」

そして間をおいて

「生きてよ」

私はその言葉を聞いた瞬間、張りつめていたものが切れた。それまで、ずっと平気なふりをしていた。大丈夫だと思おうとしていた。でも本当は怖かった。不安だった。

我慢していた涙が、その時初めて出た。

彼は落ち着いた様子で言った。

「家族には、まだ言わなくていいんじゃない?」
「心配をかけるだけだし、きっと治るよ。」

その言葉に背中を押されて、私は手術が終わるまで家族には話さなかった。今思うと、よく黙っていられたと思う。でもあの頃は、目の前のことを乗り越えるだけで精一杯だった。

乳がんになったことを、良かったとは思わない。できることなら経験したくなかった。でも、あの日の言葉がなかったら、今の夫と結婚していなかったかもしれない。

「生きてよ」

たった一言だった。

でも、私にとっては人生を支えてくれた言葉だった。

今でも思う。

あの人と出会えて、本当に良かった。

大切な人に病気を伝える時(この経験から伝えたいこと)

家族やパートナーに病気のことを伝えるのは、自分自身の宣告と同じくらい辛く、エネルギーが要るものです。

  • 相手の反応を責めない: 伝えられた側もショックで、すぐには最適な言葉をかけられないことがあります。言葉に詰まったりしても、それはあなたを大切に思っているからこその動揺です。
  • 一緒に情報を知ってもらう: 病状や治療方針について、自分一人で説明するのが難しい時は、一緒に主治医の話を聞きに行ってもらうのも良い方法です。
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この記事を書いた人

はじめまして、凪です。

「凪の森」は、私が学び、経験し、役に立ったことを、できるだけ分かりやすく残していく場所です。
乳がん経験を機にFP3級を取得(現在2級勉強中)

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