あの傾いた人たち① ママはお金で傾いた

ママはお金がなかった。でも借金を恐れない人だった。
ある日、アルバイトだった私にこう言った。

「めい、お金貸して」

金額は100万円だった。さすがに私は戸惑った。
当時の私にとって100万円は大金だ。
貸してもいいのか。返ってくるのか。少し考えていた。

するとママは呆れた顔で言った。
「なんで悩みよるん。」
「絶対返すに決まっとるが。」

そして続けた。
「あんた私から給料もらっとるのに。」

私は思わず笑ってしまった。
不思議なことに、ママは人に頼みごとをする時だけ地元の言葉になる。
お金の話や頼みごとになるといつもそう。
強すぎて、たまに意味が分からない言葉もある。

それがまた何とも言えなかった。
怖いような、笑えるような。

100万円を借りようとしている人とは思えないほど堂々としていた。
普通は借りる側が不安そうな顔をする。
ママは違った。借りる前から自信満々だった。

結局、私は100万円を貸した。
服を買ってもらったこともあったし、世話にもなっていた。
それに何より、ママはどこか憎めない人だった。

ママは見た目にもあまり頓着しない人だった。なのに自分では、

「私は美人」

と本気で思っていた。そんなところも含めてママだった。

借金はする。
お金はない。

でも不思議と人に愛される。そして約束だけは守る。

数年後。

100万円は全額返ってきた。それも利息付きで。
しかも法定利息内ではあるものの、かなり高い方だった。

返済が終わった時、ママは言った。

「あんた!神様かな!」
「こんな安い金利で貸してくれる人がおるんか!」

私は思った。
いや、安くないぞ。かなり高いぞ。

でもママは本気だった。
今振り返ると、ママは確かにお金で傾いた人だった。

借金もした。
苦労もした。

人に頭を下げることもあった。

でも義理だけは、一度も傾かなかった。

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この記事を書いた人

53歳の会社員。
お金、働き方、人生のこと。

答えを探しながら、
凪の森を書いています。

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