ママはお金がなかった。でも借金を恐れない人だった。
ある日、アルバイトだった私にこう言った。
「めい、お金貸して」
金額は100万円だった。さすがに私は戸惑った。
当時の私にとって100万円は大金だ。
貸してもいいのか。返ってくるのか。少し考えていた。
するとママは呆れた顔で言った。
「なんで悩みよるん。」
「絶対返すに決まっとるが。」
そして続けた。
「あんた私から給料もらっとるのに。」
私は思わず笑ってしまった。
不思議なことに、ママは人に頼みごとをする時だけ地元の言葉になる。
お金の話や頼みごとになるといつもそう。
強すぎて、たまに意味が分からない言葉もある。
それがまた何とも言えなかった。
怖いような、笑えるような。
100万円を借りようとしている人とは思えないほど堂々としていた。
普通は借りる側が不安そうな顔をする。
ママは違った。借りる前から自信満々だった。
結局、私は100万円を貸した。
服を買ってもらったこともあったし、世話にもなっていた。
それに何より、ママはどこか憎めない人だった。
ママは見た目にもあまり頓着しない人だった。なのに自分では、
「私は美人」
と本気で思っていた。そんなところも含めてママだった。
借金はする。
お金はない。
でも不思議と人に愛される。そして約束だけは守る。
数年後。
100万円は全額返ってきた。それも利息付きで。
しかも法定利息内ではあるものの、かなり高い方だった。
返済が終わった時、ママは言った。
「あんた!神様かな!」
「こんな安い金利で貸してくれる人がおるんか!」
私は思った。
いや、安くないぞ。かなり高いぞ。
でもママは本気だった。
今振り返ると、ママは確かにお金で傾いた人だった。
借金もした。
苦労もした。
人に頭を下げることもあった。
でも義理だけは、一度も傾かなかった。


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