退院して家に戻ると、思っていたより普通の毎日が戻ってきた。
痛みは処方された薬でコントロールできていた。夫には「ちょっとした怪我みたいだよ」と話していたくらいで、自分でも拍子抜けするほどだった。
初めて外出したのは近所のスーパーだった。普段通りに歩くことができ、買い物もいつもと変わらなかった。
シャワーを浴びるときには傷口が気になった。恐る恐る見てみたが、大きな医療用の絆創膏が貼られていて、傷そのものは見えなかった。それだけで少し安心したのを覚えている。
腕も普段通りに動かすことができた。退院後に通院することもなく、生活だけを見れば手術前とほとんど変わらなかった。
それでも、頭の中にはいつも病理検査の結果があった。
手術が終われば次の治療が始まるのだと思っていた。しかし実際は違った。病理検査の結果が出なければ、今後の治療方針は決まらない。飲む薬すら決まらないことを、そのとき初めて知った。
私にできることは、結果を待つことだけだった。
時間があると、乳がんを経験した人たちのブログを読んでいた。少しでも自分と同じような人の体験を知りたかったからだ。
けれど、当時の私が見つけられたのは、重い症状や厳しい経過を書いた体験が多かった。読むたびに、「自分もそうなるのではないか」という不安が膨らんでいった。
あの頃の私は、早期発見だった人が、その後どのような生活を送っているのかを知りたかった。仕事にはいつ頃復帰できるのか。それも気になっていた。
手術のあと、普通に歩けること。近所のスーパーへ買い物に行けること。夫と「ちょっとした怪我みたいだね」と笑って話せること。
そんな何気ない日常を送っている人の体験を、私は見つけることができなかった。
だから私は、この体験記を書いている。
乳がんと診断されても、早期発見であれば、このような経過をたどる人もいることを伝えたい。
この体験記が、病院へ行くことをためらっている人の背中を少しでも押すことができたならうれしい。そして、今まさに病理検査の結果を待ちながら不安な毎日を過ごしている人に、「こんな人もいるんだ」と思ってもらえたら、それだけでこの体験を書いた意味があると思っている。
あの日の私には、ただ、病理検査の結果を待つことしかできなかった。
退院後の自宅療養で気をつけること(この経験から伝えたいこと)
退院して自宅のベッドで眠れる喜びは大きいですが、退院=完治ではありません。
- 「普通の生活」を急がない: 痛み止めでコントロールできていると、つい動けそうな気がしてしまいますが、体は大きな手術を乗り越えたばかりです。家事などは完璧を目指さず、思い切って手抜きをしてください。
- 周りに「甘える」ことも治療のうち: 家族には「少し大げさかな?」と思うくらいで伝えておくほうが、無理なくサポートを受けられます。

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