退院を翌日に控えた午後、新しい患者さんが同じ病室に入ってきた。五十代くらいの女性だった。
荷物を整理する間もなく、看護師さんと治療の話が始まった。詳しい内容は聞こえなかったが、そのやり取りから、これから始まる治療は簡単なものではないことだけは伝わってきた。
しばらくすると、ご主人から何度もナースステーションへ電話が入っていた。看護師さんが、そのたびに対応している様子が見えた。
夜、病室の明かりが消えたあとだった。
静かな部屋に、小さな声が聞こえた。
「なんでこんなことになったんだろう……。」
その言葉を聞いた私は、何も言えなかった。声を掛けることもできず、聞こえなかったふりをすることしかできなかった。
そのとき、同じ乳がんでも、一人ひとり置かれている状況はまったく違うのだと強く感じた。
私は手術を終え、あとは病理検査の結果を待つだけだった。
それでも結果が出るまでは、本当にこのまま終われるのか分からない。その時間は思っていた以上につらかった。
ふと、術前カンファレンスで医師から聞いた言葉が頭に浮かんだ。
「5mmのがんでも、命を落とす方はいます。」
手術は終わっても、不安は終わっていなかった。
同室の患者さんとの距離感(この経験から伝えたいこと)
大部屋での入院生活は、自分とは違う状況や治療段階の患者さんと同じ空間で過ごすことになります。
- 無理にコミュニケーションを取らなくて大丈夫: 挨拶程度の適度な距離感を保つのが、お互いにとって一番ストレスがありません。カーテンを閉めて、自分の心と体の回復だけに集中して大丈夫です。
- 思いがけない出会いが力になることも: もし自然に話す機会があれば、同じ病棟で頑張る仲間の存在が、孤独な入院生活の励みになることもあります。

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