手術の日程を決めるため、主治医から聞かれた。
「全摘にしますか。それとも部分切除にしますか。」
私は一瞬、意味が分からなかった。
「そういうのは先生が決めるんじゃないんですか?」
そう聞くと、「いや、僕じゃないんだよ。いろいろ考えもあると思うけど、手術の日程を決めるので、今日中に決めてください。」と言われた。
突然のことだった。乳がんと診断されたばかりで、まだ頭の整理もついていない。その日に手術方法まで決めなければならないなんて思ってもいなかった。
私が悩んだ理由は一つではない。
全摘を選べば、放射線治療を受けなくてもいいと言われていた。部分切除を選べば、手術のあとに放射線治療が待っている。
当時の私は仕事をしていた。毎日病院へ通いながら仕事を続ける生活が想像できなかった。
「全部取ってしまった方が楽なんじゃないか。」
そんな気持ちもあった。
そのまま形成外科を受診することになった。全摘を希望する場合は、形成外科で再建について説明を受ける必要があったからだ。
女医の先生が、とても丁寧に説明してくれた。
胸を全部摘出したあと、背中やお腹の組織を使って胸を再建できること。保険が適用されること。反対側の胸も、大きさを合わせるために手術できること。
ここまで説明を聞いて、私はかなり全摘に心が傾いていた。
でも、その後の説明で気持ちはまた揺れ始めた。
「背中やお腹から組織を取るので、実は胸よりも、そちらの傷の方が痛みます。手術時間も六時間以上になります。」
そして先生は続けた。
「脂肪を移すだけではありません。足の太い血管も一緒に移植します。血管がきちんとつながれば問題ありません。でも、もしうまくつながらなければ、移植した胸は冷たいままになります。」
全摘は、胸を取るだけの手術ではなかった。
私はまた迷い始めた。
すると先生は最後にこう言った。
「今、部分切除を選んだとします。考えたくはありませんが、もし再発した場合は、その時はもう部分切除という選択肢はありません。全摘になります。」
少し間を置いて先生は続けた。
「でも、今はステージ1です。私なら、今は部分切除を選びます。」
その一言で、私は決心した。
乳腺外科へ戻り、主治医に「部分切除でお願いします。」と伝えた。
すると主治医は笑って、「うん、僕もそれがいいと思うよ。」と言った。
その一言を聞いて、ようやく安心した。
あの日、私は手術方法を決めた。
正確には、一人で決めたのではない。
親身になって話を聞き、最後にそっと背中を押してくれた先生がいたから、私は前に進むことができた。


コメント