⑩ステージ1でした

検査結果を聞くまで、一時間以上時間があった。

病院の食堂で軽く食事を済ませ、そのあとコーヒーをテイクアウトした。

診察室の近くへ戻り、呼ばれるのを待つ。

待合室には、さまざまな人がいた。

車いすのお母さんを静かに押す男性。夫婦で順番を待つ患者さん。病室から来たのだろうか、パジャマ姿の人もいた。

誰も大きな声では話さない。

本を読んでいる人、スマートフォンを見つめている人、ただ静かに座っている人。

きっと、それぞれに事情があるのだろう。

私も、その一人だった。

紙コップのコーヒーを両手で包みながら、自分の番号が呼ばれるのを待った。

やがて、番号のランプが点いた。

私の番だった。

紙コップを近くの台に置き、ゆっくりと診察室へ入る。

「こちらへお座りください。」

看護師さんに案内され、椅子に腰を下ろした。

座るとすぐに、主治医が口を開いた。

「良かったです。広がってはいません。思っていたよりも小さいがんです。」

その言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。

主治医は続けた。

「ステージ0に限りなく近いステージ1です。ただし、切ってみないと、がんの種類は分かりません。抗がん剤が必要かどうかも、切ってからしか分かりません。」

そして最後に、こう言った。

「部分切除にして、よかったと思いますよ。」

広がっていないと聞いて、ほっとした。

一方で、抗がん剤が必要かどうかは、やはり手術をしてみなければ分からないという。

「やっぱり、まだ分からないのか。」

少し残念な気持ちになった。

会社へ行けば、また「抗がん剤はするの?」と聞かれる。そのたびに、「まだ分かりません。」と答えなければならないことも頭に浮かんだ。

それでも、がんが広がっていなかったことだけは、すぐに伝えたかった。

診察室を出ると、夫(当時はまだ彼)へLINEを送った。

「広がってなかったよ。」

しばらくすると、返信が届いた。

「良かった。教えてくれてありがとう。安心しました。」

その短い言葉に、私も少しだけ安心することができた。

診察室を出て廊下に出ると、さっきまで座っていた待合室の光景が、もう一度目に入った。

車いすのお母さんを押す男性。夫婦で順番を待つ患者さん。静かに本を読む人。スマートフォンを見つめる人。

あらためて周りを見渡して、ふと思った。

こんなにも病気と向き合っている人がいるんだな、と。

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この記事を書いた人

50代会社員。
お金、働き方、人生のこと。

答えを探しながら、
凪の森を書いています。

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