検査前は食事が禁止だった。
コーヒーも紅茶も飲めない。口にしていいのは水だけ。そして予約時間の一時間前には病院へ到着しなければならなかった。冬の朝の予約だったので、雪で遅れないか、そればかり気になっていた。
病院へ着くと、更衣室で専用の検査着に着替えた。
着替えを終えると名前を呼ばれ、最初に血糖値を測ることになった。
血糖値が高いと検査ができないと説明を受けた。
「がんは糖分を集めます。それが画像で光るんです。」
だから、血糖値が高すぎると分かりづらくなるという説明だった。
PET-CT検査とは、そういう仕組みらしい。初めて受ける検査だった私は、「なるほど」と思った。
血糖値の測定が終わると、ペットボトルの水を一本渡された。
「これを飲んでおいてください。」
そう言われたが、その時は理由までは分からなかった。
その次に待っていたのは注射だった。
といっても、普通の注射ではない。点滴のような長いチューブの先に針が付いていた。
看護師さんは慣れた様子で説明を始めた。
「この針を刺したあと、少し時間をおいて機械から放射性薬剤が送られてきます。患者さんは年に一度くらいですが、私たちは毎日扱っていますので、一度後ろへ下がります。気にしないでくださいね。」
その姿は、まるで「家政婦は見た。」のワンシーンのようだった。
鉛で覆われた壁の後ろから、看護師さんの顔だけがのぞいている。
そのまま、およそ一分ほどで注射は終わった。
続けて説明がある。
「注射を終えてから二十四時間は、妊婦さんや小さなお子さんには近づかないようにしてくださいね。」
その言葉を聞いて、改めて自分の体に放射性薬剤が入ったのだと実感した。
注射が終わると、個室へ案内された。
そこからが長かった。
部屋は薄暗く、とても静かだった。スマートフォンは禁止。本を読むこともできない。ただ一時間半ほど、その部屋でじっと過ごす。
その間に、渡されたペットボトルの水を必ず飲み切るように言われた。
不要な放射性薬剤を体の外へ出すためだという。
「できれば寝ていてください。」
そう言われたものの、初めて受ける検査で眠れるはずもない。
何もすることがない静かな部屋で、ぼんやりと時間が過ぎていくのを待っていた。
しばらくすると、看護師さんが迎えに来た。
「では、検査を始めます。」
長く感じた待ち時間がようやく終わり、いよいよPET-CT検査が始まる。
検査室へ入り、大きな装置のベッドに横になった。
技師さんから説明を受ける。
「ここから二十分ほど動かないでください。どうしても動きたくなったら、お声がけください。一度止めて、再開することもできますので。」
実は、私は少し閉所が苦手だ。
検査を受ける前は、そのことが少し気になっていた。
だが、検査室は明るく、装置の中も思っていたほど圧迫感はなかった。その点については、不安を感じることなく検査を受けることができた。
ベッドは足元からゆっくりと動き始めた。
体が少しずつ装置の中へ入っていく。
感覚としては、大きなドーナツをくぐっていくようだった。
足元から頭までゆっくりと進み、そのまま検査は終わった。
結果は、その場では分からなかった。
もし、この時点で全身に転移していたら──。
そう考えると、不安でたまらなかった。
検査は終わった。
私は検査室をあとにした。


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