検査結果を聞くまで、一時間以上時間があった。
病院の食堂で軽く食事を済ませ、そのあとコーヒーをテイクアウトした。
診察室の近くへ戻り、呼ばれるのを待つ。
待合室には、さまざまな人がいた。
車いすのお母さんを静かに押す男性。夫婦で順番を待つ患者さん。病室から来たのだろうか、パジャマ姿の人もいた。
誰も大きな声では話さない。
本を読んでいる人、スマートフォンを見つめている人、ただ静かに座っている人。
きっと、それぞれに事情があるのだろう。
私も、その一人だった。
紙コップのコーヒーを両手で包みながら、自分の番号が呼ばれるのを待った。
やがて、番号のランプが点いた。
私の番だった。
紙コップを近くの台に置き、ゆっくりと診察室へ入る。
「こちらへお座りください。」
看護師さんに案内され、椅子に腰を下ろした。
座るとすぐに、主治医が口を開いた。
「良かったです。広がってはいません。思っていたよりも小さいがんです。」
その言葉を聞いて、少しだけ肩の力が抜けた。
主治医は続けた。
「ステージ0に限りなく近いステージ1です。ただし、切ってみないと、がんの種類は分かりません。抗がん剤が必要かどうかも、切ってからしか分かりません。」
そして最後に、こう言った。
「部分切除にして、よかったと思いますよ。」
広がっていないと聞いて、ほっとした。
一方で、抗がん剤が必要かどうかは、やはり手術をしてみなければ分からないという。
「やっぱり、まだ分からないのか。」
少し残念な気持ちになった。
会社へ行けば、また「抗がん剤はするの?」と聞かれる。そのたびに、「まだ分かりません。」と答えなければならないことも頭に浮かんだ。
それでも、がんが広がっていなかったことだけは、すぐに伝えたかった。
診察室を出ると、夫(当時はまだ彼)へLINEを送った。
「広がってなかったよ。」
しばらくすると、返信が届いた。
「良かった。教えてくれてありがとう。安心しました。」
その短い言葉に、私も少しだけ安心することができた。
診察室を出て廊下に出ると、さっきまで座っていた待合室の光景が、もう一度目に入った。
車いすのお母さんを押す男性。夫婦で順番を待つ患者さん。静かに本を読む人。スマートフォンを見つめる人。
あらためて周りを見渡して、ふと思った。
こんなにも病気と向き合っている人がいるんだな、と。


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