④ 初めての恵方巻

夫は自分なりの信じるものを持っている人だ。

ご先祖さまを大切にする。
六星占術も信じている。

けれど、流行りのものに飛びつくタイプではない。
恵方巻を食べるような人でもなかった。

そんな夫が、その年の節分は恵方巻を買ってきた。
乳がんが見つかり、不安な日々を過ごしていた頃だった。

夫が言った。

「きっとよくなる。」

そして、

「初めてだけど、恵方巻を食べよう。」

方角まで調べていた。
めんどくさがり屋の夫が。

「こっちを向いて。」

「黙って食べるらしいよ。」

そんなことを言いながら準備していた。
私はその姿を見ながら、

少し可笑しくて、
少しうれしかった。

きっと本人は大したことをしたつもりはない。
でも、縁起なんて気にしない人が、

私のために方角を調べていた。

今思えば、
あれが夫なりの応援だったのだと思う。

あの年の恵方巻の味は覚えていない。

でも、

二人で黙々と恵方巻を食べた、あの時間は今でも覚えている。

きっと、一生忘れない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

50代会社員。
お金、働き方、人生のこと。

答えを探しながら、
凪の森を書いています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次