乳がんと診断された直後、真っ先に頭に浮かんだのは、
「私の保険、どうなっていたっけ。」
ということだった。
保障内容はほとんど覚えていなかった。ただ、どこの保険会社に加入しているかだけは分かっていたので、すぐに電話をかけた。
電話口のオペレーターさんはとても親切だった。
給付の対象や請求の流れを一つひとつ丁寧に説明してくれた。その話を聞きながら、「大丈夫かもしれない。」と少し肩の力が抜けたのを覚えている。
給付金を請求するには、病院で診断書を作成してもらう必要があった。
私の病院では1通約8,000円。完成まで半月から1か月ほどかかった。
細かい話だが、郵送する切手代は自己負担で、保険の対象にもならなかった。
当時の私には、診断書代も決して小さな負担ではなかった。
そして、診断給付金200万円が振り込まれた日。
思わず、
「ふう……。」
と、大きく息をついた。
うれしかったからではない。
安心したからだった。
診断給付金が入ったことで、気持ちは大きく変わった。
治療費を心配するより、
「どうすれば一番いい治療を受けられるか。」
それだけを考えられるようになった。
診察の日、私は主治医にこう伝えた。
「がん保険に入っています。良い治療法があれば、すべて受けたいです。」
PET-CT、MRI、骨シンチグラフィー、SAVI治療、遺伝子検査。
主治医が勧める治療は、費用を理由に迷うことなく受けることができた。
「不幸の宝くじ」という言葉がある。
乳がんになったことは、私にとって間違いなく不幸だった。
それでも、この言葉はよくできた表現だと思う。
宝くじが届けてくれたのは、お金ではなかった。
安心だった。
安心があったから、お金ではなく、治療を基準に選ぶことができた。
だから今でも思う。
がん保険に入っていて、本当によかった。

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