GLTDが会社に導入されたのは、私が乳がんになった翌年だった。
説明を聞いた瞬間、
「こんな保険があったのか。」
と思った。
そして、すぐに「これは入りたい」と感じた。
しかし、その時点で私は加入できなかった。
がん保険は、診断されたときの経済的な支えになる保険である。
一方、GLTD(病気やケガで長期間働けなくなったときの収入を補償する制度)は、働けなくなった後の生活を支えるための備えだった。
乳がんを経験した私には、その違いがよく分かった。
治療費は、高額療養費制度やがん保険のおかげで、大きな不安なく治療を受けることができた。
しかし、もし長く働けなくなっていたら。
不安だったのは、治療費よりも、その後の生活だった。
だから私が本当に備えたいと思ったのは、GLTDだった。
加入している同僚を見るたびに、「いいなあ」と思っていた。
もし乳がんになる前にこの制度を知っていたら、迷わず加入していただろう。
ホルモン療法が終わり、一年が過ぎた頃。
そろそろ加入できるかもしれないと思い、保険会社へ問い合わせた。
告知内容には、「過去2年間に投薬を受けていないこと」「がんの診断を受けていないこと」などの条件が記載されていた。
乳がんと診断されたのは5年前。
タモキシフェンも終了し、今は年に一度の経過観察だけになっていた。
「これなら大丈夫かもしれない。」
そう思っていた。
しかし、私が問い合わせた結果、返ってきた回答はこうだった。
「年に1回でも、がんの経過観察のために通院・検査をしている場合は、お引き受けできません。」
私は、
「一般的ながん検診と同じようなものですが、それでも難しいですか。」
と尋ねてみた。
しかし、回答は変わらなかった。
「再発確認のための通院・検査が続いている場合は、お引き受けできません。」
電話を切ったあと、仕方がないとは思った。
保険会社には保険会社の引受基準がある。
その基準に従った結果なのだろう。
それでも、少しだけ残念だった。
乳がんになって分かったのは、私が本当に怖かったのは、「がん」そのものではなかったということだ。
働けなくなり、収入が減ること。
私にとって、本当に備えたかったのは、その不安だった。
だから、がん保険を解約したことに後悔はない。
あの保険は十分に役目を果たしてくれたし、心から感謝している。
一方で、GLTDだけは今でも「入っておきたかった保険」として心に残っている。
病気を経験したことで、私の保険に対する考え方は大きく変わった。
保険には、それぞれ役割がある。
私にとって、がん保険は治療を支えてくれた保険だった。
そしてGLTDは、働けなくなったときの生活を支えるために、本当に備えたかった保険だった。
残念ながら、その備えを持つことはできなかった。
それでも、この経験があったからこそ、自分にとって本当に必要な備えは何なのかを考えるようになった。
がん保険は、治療を支えてくれた。
GLTDは、働けなくなったときの生活を支える保険だった。
病気は、私の保険の見方を変えてくれた。

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